【レコードとわたし】The Band – Stage Fright

US盤'70年オリジナル。下北沢フラッシュディスクランチにて。

メンバー写真のアウターがなくて、ジャケにシールを剥がした跡があるので、割りと安かったし、ロビー追悼って事で買ってきた。

ザ・バンドの1stと2ndは、十代のうちに一般教養的なもんで取り敢えず買ったものの、しっくり来なかった。それがすっと入ってくるようになったのはリトル・フィートの1stを聴いてからって話は前にも書いたが、気に入って熱心に聴くようになっても、やっぱり教養的な気分は抜けなかった。

いわゆるロック名盤みたいな記事でこの2枚はしつこいくらい話題になるし、どうしても感動は陳腐化してしまう。

ステージフライトはいくつかの有名曲は知ってたけど、アルバムをちゃんと聴いたのは25歳あたりだったと思う。

だいぶギターの弾き方もわかってきて、以前より聴いた音楽の量も種類も増えた頃で、それだけに、教養とか関係なく、心が震える度合いは1stや2nd以上のものがあった。

自分自身の問題の他にも、ステージフライト自体、枯れきったような前2作よりもメロディが立ってるし、ポップなところがあったのも大きいと思う。とにかく2曲目のスリーピングの衝撃ったらなかった。

南十字星はその頃にはすでに愛聴盤だったけど、あの洗練、成熟した感じともまた違う、ロック的賑やかしというか、ローラ・ニーロの言う Sweet Blindness 的な何か。甘酸っぱさ。

ザ・バンドってこんなバンドだったのかよ、知らなかった、っていう驚きがあった。

1st、2ndは「老成」というのをかなり意識的に演技してて、ステージフライトが実際の彼らの実像に近いんじゃないかな。その真っ直ぐさがよかったんだと思う。

だからなのか、ステージフライトを聴くと、最初に聴いたあの頃の空気や気分がふっとよみがえってくる。1st、2ndは定番過ぎてそういう事がない。浪人中ずっと目覚ましがわりに怒りの涙を使ってたのに、その記憶はあっても空気まで再現しない。

さて買って来たLP、記憶の音と結構違う。A-1、元々リヴォンの声がラジオ音声っぽい感じはあったけど、それがさらに極端で、まずはあれって思った。続く他の曲も聴いてて落ち着かないくらい違う。

これが噂のトッド・ラングレンミックスってやつなのかな。

全体的に、ガースの音がでかい気がする。というか、分離がいいのかな。こういう場合は大概昔から馴染んだ音の方がいいって事になるけど、こっちの方がすっきりしてて僕には好ましい。

僕のグリン・ジョンズの評価は低いのだ。

こんな感じ。 rokugensai.hatenablog.com

ロビロバ、昔からの銭ゲバ的評価のせいか、訃報に接しても自分でも驚くくらいほとんど心が動かなかった。あ、そうって感じ。ほぼ同時だったデヴィッド・ラフレイムとジェイミー・リードの訃報の方が驚きだった。えって声が出た。

それでもやっぱりスリーピングのギターソロを聴いてる内に、胸に迫るものがあった。南十字星聴いてもそんな気分にはならなかった。やっぱり僕にとって、ステージフライトは特別みたいだ。青春の一枚なんだな。

まあロビーも自分が一生懸命まじめにバンドのマネージメントしたり曲書いたりしてる間に、他の連中が酒飲んでドラッグやって遊び暮らして、あげく飲酒運転で交通事故を何度も起こして、そんでその面倒も自分が見て、その間は活動が止まって、とかやってりゃ思うところもあったろう。

同じく僕も、面倒臭い人を抱えながらバンド回してた経験者だからよくわかる。

でも、近年ガースが生活のために、手持ちの楽器をオークションに出したニュースなどに触れたりすると、おいこのやろうという気にもなる。

口では感謝とか綺麗な事言ってるけど、曲のクレジットに他のメンツに対する敬意がもう少しあってもよかったと思う。よく考えよう、お金は大事だよ。

この件について考えると、いつもこの和田唱奥田民生の騒動を思い出すんだけど、どうですかね。

nlab.itmedia.co.jp

ピース。

(2023-08-16)