【レコードとわたし】西岡恭蔵 - ディランにて

‘72年オリジナル。レコードシティ通販にて。

時々オリジナルという表記で、お馴染みのベルウッドマークに濃い緑のレーベルのものが出てるけど、それは2ndプレスで、この単純な松ぼっくりマークに薄緑のレーベルが1st プレス。なかなか見ないのを見つけてしまったので、一も二もなく買ってしまった。

‘89年の浪人中だったと思う。日本のフォークのコンピレーションCDが葛西図書館の視聴覚資料コーナーにあったので借りてきた。

銀色の地に寛さんや岡林などフォークシンガーの白黒写真がレイアウトされて、なんてこたない明朝体で書かれたフォーク云々のタイトル。ワゴンセールにだってなさそうな、純粋な資料用みたいな装丁だった。

そのCDの収録曲は、寛さんの誰を怨めばいいのでございましょうかやら、加川良の教訓Iやら、「お前もこっち来い」と言わんばかりの並び。頭をぶん殴られた気分だった。

その中でも恭蔵さんのプカプカは、初めて聴いてもう夢中になってしまった。すぐにアコギでコードを取って、ずっと歌ってた。

このコンピCDの他にも同じシリーズでライブ音源だけ集めたものも図書館にあって、それには寛さんの「教訓110番」というすごいタイトルの曲が入っていて、これまた超おもしろソングだったんだけど、それ以来聴けていない。小坂忠の「庭はぽかぽか」もこれで聴いて腰抜かしたんだなあ。

この2枚のCD、いつか入手したいと思っているけど、うーん。

で、「ディランにて」の話に戻るが、CD再発は’90年らしいので、結局アルバムで聴けたのは次の年だったんだな。すぐに聴けてたような気がしてた。

とにかく「ディランにて」は好きで好きで、何かと言えば「ひとりでーいきーるには〜」なんてよく口ずさんでた。肝心のプカプカ、B面まで待たされるんだけど、名曲揃いでまったく問題なしだ。

基本、アコギじゃかじゃかにベースとドラムだけで、普通だったらデモ音源みたく思えるはずなんだけど、これで完全に世界が完結してる。説得力が尋常じゃない。

「サーカスにはピエロが」、前述のコンピCDで、ディランIIバージョンを聴いた時は、そのアルバムタイトルにもなってる「きのうの思い出に別れをつげるんだもの」ってところが、僕もまだ若かったからか、どうにも甘くてくすぐったくて、正直苦手だった。でも、恭蔵版のそれは、まったく気になることなく、自然に耳に入って来て、自分でも驚いた。

あれもこれも結局、あの調子っぱずれなところもある歌声に、全部持っていかれてるんじゃないかと思う。隣で歌ってくれてるみたいだ。

アナログで改めて聴くと、ベースの音が超かっこいい!曲によってはクリス・スクワイアみたいでびっくり。CDじゃ全然そんな事思わなかった。

あと、ジャケがでかいと、メガネをかけた恭蔵さんらしい顔がちゃんと確認できるのも嬉しい。

恭蔵さんは、昔東京ボブディランのバックで弾いた時に共演して、その時に挨拶もしたので、さん付け。ミヤケンの同級生のお父さんだし。さすがにゾウさんとまでは呼べないけど。

目の前で見ると、とっても大きかったなあ。ギブソンのJ-200が普通のドレッドノートくらいに見えたもんだった。

ピース。

(2024-01-03)