【レコードとわたし】The Incredible String Band – The Hangman's Beautiful Daughter

なんたってこのタイトルにグッときますな。US盤’69年のリプレスみたい。レーベルが赤いので。でもマトリックスはオリジナルのやつなんだよなー。それなりにボロボロ。A-4の good night、good night って繰り返す一番いいところで針飛びしちゃってショック・・・

大学時代、毎年4月から5月にかけては、変人ばっかりのオールラウンド革命サークルである僕らのサークル室にも普通の大学生が迷い込んでやってくる。しばらくすると、いなくなってしまうんだけど、ある年に来たロック好きの青年は印象的だった。

彼はお気に入りのCDを持ってきて、いろいろ教えてくれた。ロッキンオン読者だったはず。音楽を熱く語ってくれる人で、僕らは新しめの音楽は全然知らなかったのでなかなか面白かった。曲を聴きながら「ここのグルーヴがいいんですよ」と言うんだけど、割とフラットな8ビートで、僕がグルーヴと言って連想するものとは全然違ってたり。

彼も交えて5、6人でだべってるうちに「めし食いに行く?」って誰かが言い出したんだけど、そこにいたカヨコって子が「わたしはいいや」って言って残った。で、行きたいやつだけで行く事になって部屋を出た。彼はついてきたんだけど、なんか「ほんとに自由なんですね・・・」ってすごい驚いてた。

最初その彼の驚きの理由がピンと来なくて、何を言ってるんだろうと思ったんだけど、どうやら高校やらのそれまでの生活では、友達同志でだべってるような状況で、誰かがメシに行くんだったらみんなで一緒に行くべきというのが当たり前だったらしいのだ。

そんな事で自由って、ハードル低いな!

と笑ってたんだけど、今になってみると、クソみたいなホモソワールドなんてそんなもんなんだろうな、と思う。僕はそういうのに縁がなくてほんとよかった。彼もこの件で意識がちょっと新しくなって良かったと思う。

そんな彼が僕たちが聴いてる音楽にも興味があるというんで、彼に貸したのが、この Hangman’s Beautiful Daughter をダビングしたカセットテープだった。まあたまたまその時かけてからとか、目の前にあったからとか、そんな理由だったと思う。

後日彼がそれを返しに来たので、感想を聴いたら「気が狂ってると思いました・・・」とぼそっと言って、その後彼はサークル室には来なくなってしまった。 そんなほのぼのとした思い出が、このアルバムにはある。彼ももうアラフィフだよなあ。元気かな。

(2022/3/7)