【レコードとわたし】アン・サリー - Voyage

‘21年再発。アナログとしてはオリジナルってことになるのかな。Amazonにて。

あれは’92年だったか’93年だったか。当時付き合ってた人が大学で写真部の部長をやっていて、学園祭に出展する写真を撮るから付き合え、後輩も来るってんで、出かけた事があった。

なんで同行したのかさっぱり思い出せないんだけど、いい気候だったし、まあ街を散歩がてらって感じだったのかなー。

それで、そのやって来た後輩というのが、もう見るからに聡明という女性で、首からさげた大きな一眼レフも凛々しくて、ジュリエット・ルイスみたいな人だった。

今じゃジュリエット・ルイスもホワイトトラッシュな人とか色々な役をやってるけど、当時の、ギルバート・グレイプの彼女のイメージ。

後輩さんとはそれっきり会う事はなかったんだけど、その時の印象が強烈だったのと、何かというと付き合ってた人が話題にするので、僕の中ではすっかり馴染みの人になっていた。

なんだったら話題にする時は馴れ馴れしくも「ちゃん」付けで呼んでいた。

その写真部で、写真機メーカーの人を招いてクリニックみたいなことをやったことがあって、その時来たメーカーの人は、しきりにそのジュリエット・ルイスさんの事を褒めていたんだそうだ。彼女が撮る写真ではなくて、彼女自身が、絵になる、表情が素晴らしい、と。

肝心の写真はどうなんだっていう話だけど、それほど彼女に相当なカリスマがあったんだと思う。一回しか会ってない僕もこんだけ未だに書けるわけだし。

時は流れて2001年、僕はバンドを解散して、初めて就職して1年経過した頃。

仕事帰りに新宿のタワーレコードに寄って試聴機コーナーをウロウロするのが日課だったんだけど、ふと目の端に入ったレコジャケを二度見した。

そのジャケに写った顔、あの日会ったジュリエット・ルイスの彼女に雰囲気が似てる、と思ってポップを見るとそこに「アン・サリー」とあった。

あんさりちゃんだ!髪がうんと短くなってるけど、間違いない。

びっくりしてすぐにヘッドホンして再生ボタンを押したらば、あまりのクオリティに2度びっくり、特にA-2のジョニ・ミッチェルの All I Want の素晴らしさ、いやーほんとびっくりした。

そこまで印象に残ってて、なぜかCDは買わなかった。それっきり今回LPを買うまで手に取る事はなかった。

思うに、2001年、就職したばかりでまだルケーチも始まっておらずで、そんな時期に、知った人のいい音源とか面白く思わなかったんじゃないかなあ。僕は小さい人間なのである。

先日ディスクユニオンにLPが中古で出ていて、今こそ買う時だと思ったけど、調べたらアマゾンで新品が左程変わらぬ価格で出ていて、本人に還元される方がよいだろうと即ポチった次第。

試聴機で見かけてから20年越し。時の流れが早い。信じられないくらい。

30年前、写真部にやってきたメーカーの社員さんの慧眼を思いつつ、噛み締めるように聴いた。

それにしても真夜中のオアシス、ギターの人がソロに挑んでいて素晴らしい。自分ならではの真夜中のオアシスになってる。

僕だったらできませんって言っちゃうなあ・・・やるとしたって、きっとコピーしそこねみたいなことしかできないと思う。手も頭も完全停止してしまうだろう。

ピース。

(2023-10-30)