‘73年オリジナル。エサ箱で。
これは実家にもあるんだけど、それはジャケに弟の書いた落書きがある思い出の品なので、家出る時に持ってくるのは憚られた。
僕が幼稚園児の頃、我が家の初代カローラレビンには8トラックテープのプレイヤーが積まれており、ドライブ中はよく親父さんが好きな音楽をかけていた。
初代レビン、いわゆるファミリーカーじゃないところが、子供がまだ幼稚園児って感じだよね。2ドア、後ろに乗るの面倒だった。閑話休題。
ある日親父さんに、錦糸町の、あれはレコード屋だったんだろうか、8トラがいっぱい置いてる店に連れて行かれ、車の中で聴く用に好きなのを買ってやると言われた。
親父さんとしてはアニメの主題歌集なんかを想定していたんだろうけど、僕が選んだのはなぜか井上陽水のベストだった。「ほんとにこれでいいの?」って念を押されたのを覚えてる。
ジャケは金網の向こうにチリチリ頭の陽水が立ってる写真で、調べるとヤフオクなどで出品された事もあるようだ。
自分でもなぜこれを選んだのかさっぱりわからない。ジャケに何かヒーロー的なかっこよさを感じたような気がする。
そんで聴いたら子供ながらに大いに気に入り、あかずの踏切やら小春おばさんやらソラで歌えるまでになったので、そういう事ならってんでLPの氷の世界が我が家にやって来て、長きに渡って聴き倒される事になった。
そんなわけで、極々普通に井上陽水ワールドに親しんでいたので、氷の世界とかあかずの踏切とか、何の疑問も抱いてなかったんだけど、中学生になって同級生の石塚くんに聴かせたらいたく気に入って、「変な詞だなあ」って言うもんだから、そうだよ、これ変だわ、って急に覚醒したんだった。
人間の認知ってのも本当にいい加減であるなあという事を思い知った。勉強になった。ありがとう陽水。
親父さんは「白い一日」が一番好きだと言っていた。特に詞を称揚していたけど、地味な曲なのに、なんだか渋いなあと思ったな。ちなみに作詞は小椋佳だ。
ピース。
(2022/4/20)