【レコードとわたし】Cream – Disraeli Gears

国内盤'78年再発。とDiscogsにはあるが、ライナーのクラプトン年表は’79年まで網羅しているのでおそらく間違い。黄色い帯の2,000円のシリーズ。

生まれて初めて人前で演奏した曲が Sunshine Of Your Love だった。リフの繰り返しだから耳コピ楽だったし、誰も知らないから粗くてもバレないだろうし、なにせ自分が好きなんだからしょうがない。

僕はシックを聴いてギターを始めようと思ったんだけど、楽器屋さんでそんな話を店員さんとしてたらえらく食いついてくれて、それが松浦さんという人だった。

松浦さんは、そういうバッキングに凝る人はプロになれるよ、って夢いっぱいの16歳(まだ15か)に嬉しい事を言ってくれたりして、アース・ウィンド&ファイアとスタッフがいいよってすすめたりしてくれた。

なんて事言いつつ僕は結局クリームだなんだ、古いロックにはまっていくんだけど、松浦さんは古いロックも詳しくて、彼に会いによく島村楽器に通った。

高校1年の秋頃にはもう最初に半額で買ってもらったヤマハSEだと物足りなくなって、クラプトンの持ってたような黒いストラトが欲しくて、生まれて初めてのバイトを始めて、これまた生まれて初めてのローンを、親父さんに保証人になってもらって組んだ。

フェンダージャパンの8万円くらいの、ピックアップ がUSAのやつが欲しかったんだけど、店頭にはないので松浦さんに注文してもらった。

そしたら黒は売り切れとの事で入荷未定、松浦さん、独断でタバコサンバーストに変更してた。独断ってすごいよな、今考えると。まあでもまあいいか、って事でそのまま入荷を待つことにした。

で、届いたって事なので島村に行って現物みたら、いやータバコサンバースト、かっこいいのなんの。ドミノスの頃みたいでしょーとか松浦さん言ってたけど、その頃まだドミノス知らなかったからよくわからんかった。けどこれは黒よりこっちだったな、とすぐに気に入った。

あと3点スイッチなのも渋かった。不便だったけど、そこがまたよかった。

高校2年くらいかな、松浦さんは結局西葛西から京葉線沿線の店に異動になってしまった。海浜幕張か、稲毛海岸か、そこらへん。夏休みに、ギター担いで松浦さんに会いに行った。遊べるかなーと思ったんだけど、結構忙しくて、店で一人で試奏させてもらったりして待ってた。

やっと閉店間際で時間ができて、僕は今度バンドで Sunshine Of Your Love をやるんですって言ってリフを弾いて見せたんだけど、僕は5フレットでDをがっつり弾いてて、そしたら松浦さんが、こうやって弾くんだよって10フレットのところでD7をグッと本物っぽいボイシングで弾いて見せてくれた。

僕は誰かにギターを習ったりした事がほとんどなくて、思い当たるのはこの時くらいだ。だから松浦さんは僕にとっての唯一の師匠みたいな存在だ。

松浦さんは結婚して、相手の姓に変えてたんだけど、確か山田さんとかそういう普通の名字だったはずなんだけど、よく覚えてない。「松浦」というのもおぼろげだったんだけど、高校の時に書いてた日記めいたものが見つかって、彼と初めて会った時の事が書いてあったのでやっとわかった。'86年8月11日だった。

お元気かな。

タバコサンバーストのストラトはその後べっ甲ピックガードにしたり、センターPU外したりして、ジンタの頃までずっと使い続けた。今もあるけど、もうネックもそってフレットも減っちゃって、隠居している。黒だったらこんな使い続けなかったと思う。松浦さんには感謝しかない。

(2022/2/17)